2013年1月16日水曜日

森光子さんの官位

今朝のニュースで大島渚監督がお亡くなりとのこと。
私の記憶の中の著名人リストがだんだん寂しくなってきました。

ところで昨年、森光子さんが亡くなられた後、従三位に叙位されたというニュースが
ありました。
従三位というのは、古代の律令制において貴族や官吏の地位の序列を示すものでした。

政府の役職につくためにはそれに相当する官位が必要で、従三位は中納言や大宰師、
近衛大将といった極めて高い地位に相当します。
従三位の上が「正三位」、その上は「従ニ位」「正ニ位」「従一位」と続き、最高位
の「正一位」は関白太政大臣クラスです。

従三位は、平清盛より前の時代で武士の最高位だった正四位よりも、ひとつ上のランク
にあたります。
源頼政が平清盛のおかげで、源氏として始めて従三位をもらったあと、それを祝して
「源三位(げんさんみ)」と呼ばれました。

室町時代では足利将軍家の一族や鎌倉公方が従三位でした。
戦国時代では、足利義昭、織田信忠、毛利輝元、小早川秀秋の最後の官位が従三位で
した。
江戸時代では御三家、御三卿が任じられる官位でした。
明治になってからは、大久保利通、児玉源太郎など。

以上は生前に叙位された例でしたが、死後に官位を叙位されることを追贈と言います。
故人への叙位は長い歴史が経過した後なので評価が「甘め」にはなりますが、明治後に
従三位を追贈をされたのは、武田信玄、島津貴久、柴田勝家、大友宗麟など、錚々たる
人たちです。
戦後は棟方志功、黒澤明、森繁久彌などのほか、作家や学者、官僚、芸能人等幅広い
分野の人たちが叙位されています。

要するに森光子さんの従三位という評価は、武田信玄に並ぶほどのものだと言うこと
です。
叙位は古来より天皇だけが行うことができる重要な権限です。
なお、現在の叙位は天皇の国事行為ではありますが、内閣の助言と承認のもとに行われ
ています。


(日野 孝次朗)