2012年8月1日水曜日

座礁事故から考えてみました(のぞみ総研メルマガ2012.2.1より)

 イタリア中部の地中海にあるジリオ島の沖で、イタリアの豪華客船
「コスタコンコルディア号」が座礁、転覆した事件ですが、事故から
10日ほど経って事故の原因の究明も進んできました。

 この船は、2006年に完成した全長が290メートル、総トン数
114,147トンという巨大な客船(ちなみに日本最大の飛鳥Ⅱは
50,142トン)で、本来は水深のある沖を通らなければならなか
ったにもかかわらず、島出身の乗員のために島に近寄りすぎて
座礁したということのようです。

 船長は、乗客の非難誘導の指揮をしないばかりか、いち早く船を
放棄するなど、海難発生時に船長がとるべき義務を果たしていない
ことが問題になっています。法律的にも、船長は乗客乗員全ての避難
が完了するまでは船を離れてはいけないことになっていますので、
数千人の乗客を残して船を放棄した船長は、刑事的にも訴追を免れ
ないことになります。

 今回の事件で驚いたのは、むしろ乗客の多さです。事故当時同船
には3276人の乗客が乗っていました。巨大な船の中で、停電も
発生している中では冷静な判断ができなくなり、パニックが起こるの
も無理はありません。1000人以上の乗組員も、多くは資格を持
った船員ではないので適切な避難誘導が出来なかった可能性も指摘
されています。乗客の証言でも、適切な誘導がなかったという証言
が多く寄せられています。

 今回の事件は、万が一の事態が発生したときのことを、危機管理
という側面から充分に考え日常から厳しく訓練を続けておくことの
重要性を考えさせられました。

(今村 正典)