2012年5月10日木曜日

特許は事前の調査が重要   -「サトウの切り餅」の特許紛争から- (のぞみ総研メルマガ 2011.11.2より)

最近、あの「サトウの切り餅」についての特許紛争が新聞に出て
いました。

越後製菓が、佐藤食品工業に、「サトウの切り餅」の製造・販売
差し止めと14億8500万円の賠償を求めた特許訴訟の高裁で
の中間判決が報道されたわけです。

特許の権利範囲は文章で表現されます。
ある技術がこの文章に当てはまると、特許の権利範囲に入って
しまうことになります。

越後製菓の特許は、切り餅の側面に溝を設けたことを文章で表現
しており、これが特許の権利範囲となっているのです。
「サトウの切り餅」は、この文章に当てはまってしまったわけですね。

権利範囲を表現した文章に当てはまると、適法に製造を継続できる
権利を持っていなければ、権利侵害になってしまいます。
そうなると、権利自体を無効にしない限り、商品形状などを変更
したり、製造販売を止める必要がでてきます。
これはビジネス上の大きな問題ですね。

また、最終的に侵害かどうかというより、紛争が生じること自体が
会社にとって大変な負担です。
取引先も巻き込んで大事になってしまいます。
権利侵害のリスクを下げるには、十分な調査をするしかありません。

侵害調査は商品企画や開発段階で行うのが良いでしょう。
物を製造した後で侵害のおそれが出てくると、製造部門を巻き込んで
大騒動になってしまいます。
一方、調査にもかなりのコストが掛かりますので、商品企画や開発
において出てきたもの全てに調査を行うのは現実的ではありません。
製造販売する可能性が高いものの範囲に絞る必要があります。

現在、多くの調査会社がありますが、それぞれ得意分野を持っています。
適切に選んで依頼した方がよいでしょう。
しかし、調査をしても紛争が起きるときは起きるわけですから、
その点はリスクの一つとして認識しておくしかありません。


弁理士 松下恵三