2012年4月11日水曜日

適正な賃料について考える(前編)

こんにちは、不動産鑑定士の藤田です。
事業者さんにとって家賃価格が適正であるかどうか、わかりにくいと思いますが、ある程度の評価は可能です。
今の賃料が適正なのかどうか。
気になる方のため、ひとつの考え方として以下に解説させていただきます。


まず、家賃を考えるに当たっては
「月額支払賃料」
「月額実質賃料」

の両者を理解し、区別しなければなりません。

具体例として、私が実際に評価したケースを挙げさせて頂きます。

所在:都内の有名商業地域内
所在階:10階建の2階部分
テナントの業種:診療所
契約面積:68.51㎡
当初契約期間:平成17年4月1日~平成19年3月31日(以降は2年ごとに自動更新)
月額支払賃料:382,950円
月額共益費:93,150円
保証金:3,000,000円
権利金:なし

不動産鑑定上でいう、「月額支払賃料」とは、「毎月テナントが大家さんに支払っている賃料」のことを指します。
よって、上の設例でにおける「月額支払賃料+月額共益費」を指します(よって合計で476,100円)。

一方、月額実質賃料とは、「月額支払賃料に、保証金・権利金の運用益及び償却額を加算したもの」が定義となります。

少し難しく感じると思いますので、保証金・権利金の「一時金」と呼ばれるものについて解説いたします。

保証金とは 契約締結時に預かり金的性格の一時金として収受され、契約関係終了時に原状回復等の費用を控除して返却される性格の一時金です(アパート・マンションでいう「敷金」に当たります)。

権利金とは、 契約締結時に賃料の前払い的性格の金銭として収受され、契約終了時に返却されない性格の一時金です(アパート・マンションでいう「礼金」に当たります)。

したがって、土地・建物を提供・建設した大家さんは、その資本投下に対応する投下資本を回収するため、テナントから収受する経済的対価として、月額支払賃料に保証金の運用益と、権利金の運用益及び償却額を加算したものであるとの理論構成です。


この関係は以下のように表すことが可能です。

月額支払賃料 +(保証金の運用益+権利金の運用益と償却額)= 全ての経済的対価

もっと簡単に言えば、上記の例にあるテナントと、全く同じ条件のテナントがおり、毎月同額の476,100円払っていたとしても、保証金が10,000,000円であれば割高ですし借りたくないですよね?
つまり、「賃料が適正か否か」というのは、月額支払賃料ではなく、月額実質賃料ベースで比較しなければ判断できないということです。


(後編につづく)


不動産鑑定士 藤田勝寛