2011年11月9日水曜日

第五章 社会的責任の認識及びステークホルダーエンゲージメント(その2)

5.3 ステークホルダーの特定及びステークホルダーエンゲージメント

 組織の決定や活動はステークホルダーに対して何らかの影響を与えることになります。ですから、組織は自身に関連するステークホルダーについて特定しなければなりません。企業の場合、株主や従業員といったステークホルダーはすぐに特定できますが、ステークホルダーは必ずしも簡単に特定できるわけではありません。関係しているステークホルダーは、組織の決定や活動が自身に対して何らかの影響を与えることを認識していないということもあり得ますし、人間以外の生物などのように、そもそもステークホルダーとしての意思を現すことができない存在であるかもしれません。

 従って、組織は自らの決定や活動が、どのようなステークホルダーに対してどういった影響があるのかについて十分に考え、認識したうえでステークホルダーを特定することが求められます。こうして特定されたステークホルダーの利害は、必ずしも一致しているとは限らないので、組織はその利害がどのように自らの決定や活動と関連し、社会的責任としてどのように対応すべきなのかを検討しなければなりません。

 ステークホルダーと組織はその利害関係について積極的に双方向でコミュニケーションを行って、それぞれの利害や関心について理解することが必要なのはいうまでもありません。組織が積極的にステークホルダーと関わる中で双方が受け入れることが可能な部分を見つけ出すことができるように活動をするプロセスのことをステークホルダーエンゲージメントといいます。

 ステークホルダーエンゲージメントは、双方向のコミュニケーションとしての対話が基本となりますから、単なる広報活動とは異なりますし、発言することのない(できない)ステークホルダーであっても、その存在を無視することはできないものと考えられます。

 ステークホルダーエンゲージメント自体がまだ発展途上の概念であって、これからも大きく変貌するころがあるかもしれませんが、ステークホルダーエンゲージメントの中心が双方向の関わりであって、社会の持続可能性に関して必要なことであるという部分が変わってしまうことはありません。