2011年10月19日水曜日

第四章 社会的責任の原則(その3)

今回は、社会的責任の原則のうち「ステークホルダーの利害の尊重」「法の支配の尊重」「国際行動規範の尊重」「人権の尊重」の四つについて説明します。

4.4 ステークホルダーの利害の尊重

組織は、自らを取り巻いているステークホルダーとの対話を通してその利害を尊重することが必要ですが、そのためにはまず関連するステークホルダーを特定しなければなりません。特定されたステークホルダーの利害は必ずしも同一の方向を向いてはいませんし、場合によってはその利害が対立することもありえます。ですから、ステークホルダーの主張と組織の関係は常に認識されていなければなりませんし、それが社会的責任との関係でどのように作用するのかを見極めていなければなりません。


4.5 法の支配の尊重

法の支配とは、いかなる組織や個人であっても法によって支配され、それを超越することはできないという考え方で、現代民主主義の根幹となる考えのひとつです。組織は、活動や決定が、その活動する地域において適用されている法的な枠組みに照らして問題なく遵守されているかを確認し、定期的に見直す必要があります。これは、組織の社会的責任としては、最も基本的な事項のひとつです。


4.6 国際行動規範の尊重

組織が活動する地域によっては、法制度を遵守することだけでは国際行動規範で求められている水準に到達しないこともあります。時にはその地域の法が国際行動規範と対立することになる場合もあります。こういった場合には、組織はできる限り国際行動規範を尊重して行動することが重要です。また、国際行動規範と整合しない活動を行う組織の行動には加担してしまうことのないように、常に確認をしていなければなりません。


4.7 人権の尊重

国連の世界人権宣言をはじめとする国際人権章典で規定される人権は人々がそれを自ら放棄することもできず、権力であってもそれを人々から奪うことは認められないという絶対的なものであるということができます。人権を尊重することは、全ての組織が行うべきことであるとされています。しかし、実際に組織が活動する領域では、これらの権利が充分に守られていなかったり、意図的に侵害されていたりする場合もあります。こういった地域においては、組織は人権が尊重されていない状況を利用したり、加担してしまったりすることのないように、常に注意をはらっておくことが求められます。