2011年9月21日水曜日

第三章 社会的責任の理解(その6)

3.3.5  社会的責任と持続可能な発展との関係

 社会的責任と持続可能な発展との間には、非常に密接な関係がありますが、これらは同じものではありません。

 持続可能な社会という概念そのものは、1980年代の初めにはすでにありました。それが、世界的に大きな注目を集めたのは、1987年の「環境と開発に関する世界委員会」において報告された「我ら共有の未来」の中で使われたことによります。持続可能な発展とは、地球上の生態系が支えることのできる範囲内で生活していくことと、将来の人々のニーズを脅かすことにならないようにしながらも、現在の社会におけるニーズは満たしていくことを意味しています。持続可能な発展のためには、成長の回復とその質の変更、雇用・食糧・エネルギー・水・衛生など基本的ニーズの満足、人口の伸びの持続可能なレベルの確保、資源基盤の保護と強化、技術の方向転換とリスク管理、環境と経済を考慮した意志決定、が必要であるとされていますが、これは経済、社会、環境という3つの側面がそれぞれに関連し合っているということにほかなりません。

 一方で、社会的責任は持続可能性とは密接に関係していますが、こちらは持続可能な発展をしていくためにそれぞれの組織が取り組むべき責任のことをいいます。組織はステークホルダーとの係わり合いの中で、持続可能性を常に考慮しながら組織としての活動を行うことが重要なのです。ISO26000という規格で捉えられている社会的責任と、企業の社会的責任(CSR)との大きな違いがここにあります。CSRは企業の社会的責任を通じて、企業にとっての利益や企業価値工場を目指すことも含みますが、ISO26000では、特定の組織の持続可能性を考慮されているものではなく、社会全体の持続可能性に焦点があてられています。

 だからといって、個々の組織は自己の利益や価値の向上だけを考えることだけでは、その目的を達することはできません。なぜなら、社会的責任は常に持続可能性を考慮している組織の活動や決定に影響を与えることになるからです。