2011年7月27日水曜日

第二章 用語及び定義(ISO26000)その10

今週は、「サプライチェーン」と「持続可能な発展」「透明性」という3つの用語の定義です。ISO26000に限らず、色々な分野で耳にする言葉ですが、使用される場面によって少しずつ意味が異なっていることもあるので、注意が必要です。
用語の解説は、あと1回で終わります。もう少し頑張りましょう。

2.22 サプライチェーン(supply chain)

 「組織(2.12)に対して製品(2.15)又はサービス(2.16)を提供する一連の活動又は関係者。」

 サプライチェーンとは、通常の場合原材料から製品に加工される過程を経て流通に乗るという一連の流れのことをいいますが、ここでは特に組織との関係の中でこれらの関係を捉える必要があります。組織が影響力を与える範囲にはサプライチェーンが含まれてくるのですが、それは組織が直接サプライチェーンに対して影響力を行使するだけではなく、間接的に影響力を行使するということもあります。組織はサプライチェーン全体についても一定の管理を行う必要があります。


2.23 持続可能な発展(sustainable development)

 「将来の世代の人々が自らのニーズを満たす能力を危険にさらすことなく、現状のニーズを満たす発展。」

 持続可能な発展とは、経済、社会、環境という3つの側面(トリプルボトムライン)が相互に関連し合う関係にあるという点を認識し、社会のニーズを満たしつつも将来にわたって社会が安定的に持続していくことができるように配慮することをいいます。持続可能な発展は私たちが未来の世代に対して負っている重要な義務であるということもできます。


2.24 透明性(transparency)

 「社会、経済及び環境(2.6)に影響を与える決定及び活動に関する公開性、並びにこれらを明確で、正確で、時宜を得て、誠実で、かつ完全な方法で伝えようとする意欲。」

 組織による決定や活動については、それが経済や社会、環境に対してどのような影響を与えるかについて、明確に情報を開示する必要があります。適切な情報開示によってステークホルダーがそれぞれの立場で組織の決定や活動を評価することができます。

2011年7月20日水曜日

職場意識改善助成金のご案内

職場環境を改善することで支給される助成金をご紹介します。

労働時間が一年を通じて長い部署はありませんか。
年次有給休暇の取得率が低いことはありませんか。
労働基準監督署から長時間労働の抑制のための自主点検結果報告書の提出を促されたことがありますか。

こんなときは、職場意識を改善して労働時間を抑制する仕組み(職場意識改善計画という)を作り、実施することで支給される助成金があります。
これは、職場意識改善助成金と呼ばれるものです。

支給要件は労災保険を適用する中小企業であることと、下記表のような要件を満たすことです。


支給要件等
支給額
1年度目
職場意識改善計画に基づき、1年間取組を効果的に実施した場合(事業実施前に比べ設定改善指標の得点が向上した事業主)
設定改善点数50点以上
50万円
2年度目
1年度目のいずれよりさらに取組を効果的に実施した場合(設定改善指標の得点が、事業開始時及び1年度のいずれも上回った事業主)
設定改善点数70点以上
50万円

2ヶ年度にわたり効果的な取組を実施し、顕著な成果を上げた場合
①年次有給休暇の平均取得率:60%以上
②事業実施前と比較して所定外労働時間数の平均を20%以上削減
③職場意識改善計画に基づいた措置を行うとともに、効果的に実施(設定改善点数100点)
50万円

150万円


なお、申請は都道府県労働局であり、申請時期は毎年4月~7月末までと期間が限定され、また受付事業場数に限りがありますので注意が必要です。



中国新幹線の特許問題はどうなっているの?

中国企業が新幹線に関する技術を日本やアメリカ等に特許出願したことが話題となっています。
報道されている内容からこの問題を検討してみます。

特許を得るには、発明を各国特許庁に出願して審査官に新規性や進歩性があるか否か等を
審査してもらう必要があります。
また、出願から一定期間経過しなければ出願した発明は公開されません。
殆どの国がこのような制度を採用しています。

中国企業は中国新幹線の技術について米国や欧州等に特許出願したことを表明し、これに
対して、マスコミは、川崎重工の技術を模倣した発明を出願するのは問題だというような報道を
しています。
その一方、川崎重工は、中国側の契約違反について言及しているものの、特許出願については
積極的にコメントしていません。
皆さんには、マスコミ報道と川崎重工のコメントとの間には、ずいぶん温度差があるように
思えるのではないでしょうか。

川崎重工が発明についてコメントしていないのは、特許出願の事実はあるものの、その発明の
内容が公開されていないため、一体どのような発明が出願されたのか判らないからでしょう。
また、技術の程度はどうあれ、川崎重工から導入した技術とは異なる技術を出願しているはずですから、模倣技術ではない可能性もあります。
いずれにせよ、蓋を開けてみないと判らないことです。

実は、他社の公知技術に改良を加えた技術内容を特許出願することは、一般的に行われている
ことです。
また、他社の技術の関連技術を特許で包囲するような作戦も、特許の世界では一般的です。
ですから、一般論としては、中国企業が既存の技術を改良した技術を特許出願することについて
何ら非難することはできないのです。

問題となりそうなのは、川崎重工側がコメントしているように、技術提供に関する契約に違反するかどうかです。
報道によれば、川崎重工側と中国側との契約内容は、提供した技術は中国国内での使用に
限るとのこと。
そうなると、川崎重工の技術を他国で使用する結果になるような行為は契約違反となります。
中国側が中国新幹線を海外展開するにあたり、川崎重工の技術を用いることなく、今回出願した
特許技術のみを用いて中国新幹線を海外展開するのは、現実問題として難しいのでは
ないでしょうか。
そうなると、川崎重工との契約違反は避けられないように思えます。

一方、海外で特許訴訟を起こすには、その国で特許権を持っていなければなりませんが、
川崎重工は海外特許を多くは保有していないと報道されています。
そうなると、米国や欧州での特許戦略は難しいものとなりそうです。
つまり、特許により受注活動を有利に進めたり、特許訴訟により中国企業を抑えることが
難しくなるということです。

今回の事態について、マスコミは川崎重工の知財戦略に問題があるかのように報道しています。
その多くは、なぜ新幹線の関連技術を海外で権利化していないのかというところです。
しかし、海外出願には莫大な費用と手間が掛かりますので、開発過程で発生する発明の全てを
海外で権利化するのは現実的ではないのです。
他の企業でも事情は同じようなものです。
そうはいっても、重要な発明については海外で権利化されていることが期待されます。
インフラ輸出は我が国にとって大変重要なことですから、川崎重工さんには本当に頑張って
ほしいところです。

今回の件でマスコミに問題提起して欲しいのは、中国が知的財産権を武器に自国技術の
売り込み攻勢をかけてきたことです。
日本国内では中国企業の模倣状況ばかりを報道していますが、その一方で有力な
中国企業は、既に多くの技術を国際出願して特許を取得している事実があるのです。
この5年以内に、中国企業による他国での特許取得数は飛躍的に増加するでしょう。
そうなると、日系企業は、各国で中国企業から特許訴訟を起こされるリスクが高くなります。
中小企業においては、中国企業からの特許訴訟により経営を危うくするケースも出てくるかも
しれません。
知的財産分野で日本企業が攻撃から防御に転じるのは時間の問題といえるでしょう。

松下国際特許事務所 弁理士 松下恵三
http://www.matsu-pat.com/index.html

第二章 用語及び定義(ISO26000)その9

今週は、「影響力の範囲」と「ステークホルダー」「ステークホルダーエンゲージメント」という3つの用語の定義です。それぞれ、社会的責任についての話題にはよく出てきますので、用語の意味を押さえておくことは大切です。

2.19 影響力の範囲(sphere of influence)

 「組織(2.12)が個人又は組織の決定又は活動に対する影響力をもつ、政治、契約、経済、その他の関係の領域・程度。」

 組織が自らの決定やそれに伴う活動に対しての責任は、直接その影響を受ける範囲に限らず、他の組織や他者に対して広範な影響力を及ぼすこともありえます。決定や活動が及ぼす影響力の範囲について分析したり判断したりしながら、組織は自らの影響力がマイナスのものとならないように注意することが必要です。


2.20 ステークホルダー(stakeholder)

 「組織(2.12)の何らかの決定又は活動に利害関係をもつ個人又はグループ。」

 ステークホルダーは、組織の決定や活動に対してなんらかの利害を持つ組織や個人のことで、通常は利害関係者などといわれます。ステークホルダーは、単に利害関係を持つというだけではなく、何らかの形で組織に影響力を及ぼす可能性がある主体であるということができるでしょう。組織は組織をとりまいているステークホルダーについて検討し特定していくことが必要です。


2.21 ステークホルダーエンゲージメント(stakeholder engagement)

 「組織の決定に関する基本情報を提供する目的で、組織(2.12)と一人以上のステークホルダー(2.20)との間に対話の機会を作り出すために試みられる活動。」

 組織がステークホルダーとの間で対話をすることはとても重要なのですが、それには情報の提供や意見の交換などを通して双方向的な取り組みが行われなければなりません。組織が積極的にステークホルダーと関わる中で双方が受け入れることが可能な部分を見つけ出すことができるように活動をするプロセスのことをステークホルダーエンゲージメントといいます。

テンカラ師がゆく(1)

 去年の釣り始めは四月四日だった。

 僕の渓流釣りは例年この頃から始まるのが常であったが、今年は三・一一に未曾有の東日本大震災にみまわれ、この国のあり方が議論されている最中にとても渓流釣りを楽しむ余裕もなければ、罪悪感さえ感じ一〇日間もあったゴールデンウイークも、ただ自宅で溜息を付いていた。
自分が塞ぎ込んでも何も変わらないし、無気力になるのが怖くなり、本日思い切って渓流釣りに出掛けた。
神ノ川に釣り人は誰も入渓していない。

 何時ものように、山の神、川の神に渓流へ入る許しを受け、流れに手を入れる。
雪代は終わり、水温は一〇℃前後かな、澄み切った水は優しく僕を受け入れてくれる
喉から胃の腑に染み通る渓水はただ、甘露。

 この滝は八年程前の大豪雨によって壊滅し、二年の歳月をかけた砂防工事によって復旧したように見えるが、滝壺の様相はまるで別物にされてしまった。
 
 この滝壺の下はコンクリート敷きで岩魚の生息場所ではなくなってしまった。僕が初めてこの滝に出会ったのは十数年前、あの時滝壺は手前に見える岩で固められて所々に大岩が点在し、恰好の岩魚生息域であった。

 記念すべき第一振りは、僕の狙い澄ました場所に吸い込まれるように着水したと同時に二尺はあると思われる大岩魚が毛鉤に食いついたが、魚の掛かった感触もなく毛鉤が消えた。

 今まで管理釣り場で六〇㌢を超える虹鱒を釣ったことだってあるのに、全く掛かった感触がないまま毛鉤が消えたことに、僕は呆然とした。

 そうだ、誰かから「神ノ川には主の大岩魚がいる」と聞いたことがあったのを思い出した。
 僕は「あいつが神ノ川の主だ」と直感した。

 僕は時を忘れて毛鉤を振り続けたが、その日はもう出なかった。
 この年はこのワンポイントにどれ程通い詰めただろう。
 だけどこの年と翌年も「あいつ」に出会うことはなかった。

テンカラ師がゆく(2)つづく

2011年7月13日水曜日

テンカラ師のつぶやき(9)

平成二一年九月一五日
  本日は曇天。
前回のリベンジのため、仕事を早々に切り上げ神ノ川のあの滝下でピンポイント勝負に挑む。
山はいつの間にか色づいている、本のほんの少しだけだが、秋が忍び寄っていることは間違いない。



こんな絶好と思える日はそうあるもので
はないので、本日はきっとあの大岩魚が
顔を出すような気がする。

勝負の時間は三〇分。
この滝下をイメージした毛鉤を振り込む
それ来い滝太郎。
全く魚影が感じられない、一体ここはど
うなってしまったのだろう。





 カメラに写ったこのシャボン玉のような丸いものは何だろう。
滝の反対側だから飛沫ではない。
と、すると「川の精霊」か?

今年の神ノ川の釣りは、きっとこれが最後になるだろうから、「来年待ってるぞ」と川の精霊が激励に来てくれたのだろう。それなら本日納竿。

それにしても肉眼では何も見えないのに、カメラを透すと見えるのはやはり川の精霊だろう。
いいお土産を貰ったようだ。
又、来年もここに立つことを約し、テンカラ師は帰路に向かう。
      ありがとう

テンカラ師のつぶやき(8)

第二章 用語及び定義(ISO26000)その8

今週は、「社会対話」と「社会的責任」という用語の定義です。社会対話については基本的に国際労働機関で用いられている用語と同じ定義となります。社会的責任についての定義はとても重要です。


2.17 社会対話(social dialogue)

  「経済社会政策に関する共通の関心事項についての、政府、雇用主、及び労働者の代表の三者間又は二者間の交渉、協議又は単なる情報交換。」
  (注記 この国際規格の目的においては、社会対話という用語は、国際労働機関(ILO)が適用している意味においてだけ使用される。)
 
 国際労働機関(ILO)では社会対話を「政府、使用者、労働者の代表が、経済・社会政策に関わる共通の関心事項に関して行うあらゆる種類の交渉、協議、あるいは単なる情報交換」と定義しています。ISO26000でも社会対話は基本的にILOで用いられている意味で使用されます。社会対話の主たる目的は雇用主と労働者というだけではなく労働を介したつながりのある利害関係者間の対話による協議や交渉、情報交換によって相互に理解を深めることで多くの課題を民主的に解決していくことが可能となります。


2.18 社会的責任(social responsibility)

  「組織(2.12)の決定及び活動が社会及び環境(2.6)に及ぼす影響(2.9)に対して、次のような透明かつ倫理的な行動(2.7)を通じて組織が担う責任。

組織の決定や活動についてステークホルダーとの関係を重視して社会や環境に対して与える影響に配慮しながら組織や社会、環境の持続的な発展を目指すことをいいます。組織は、自らの決定や活動が社会や環境に対する影響について配慮すると共に説明責任を負うこととなります。

2011年7月6日水曜日

第二章 用語及び定義(ISO26000)その7

今回は、組織の意思決定システムである「組織統治」と、組織が動くための基本的な考え方となる「原則」、あと「製品」と「サービス」といった用語についてです。

2.13 組織統治(organizational governance)

「組織(2.12)がその目的を追求する上で、決定を下し、実施するときに従うシステム。」

  組織統治は組織が持っている活動の目的を実行するために行う意思決定を行ったり、実施をしたりするために、組織内でその役割分担と意思決定の権限についてルール化されていますが、組織内がルールに従って行動するためのシステムのことをいいます。組織統治は組織が活動するために必要な最も中核となるシステムですが、規定化されている組織統治のシステムだけではなく、それぞれの組織が持っている明文化されていない組織風土も、実は組織統治のシステムとして機能しています。


2.14 原則(principle)

「意志決定又は行動のための根本的基礎。」

  組織が意思決定を行い、実際の活動をしていくためにはその基本となる考え方が必要です。さらにその考え方が共有されていなければなりません。ISO26000の中では、その基本的なものとして、①説明責任、②透明性③倫理的な行動④ステークホルダーの利害の尊重⑤法の支配の尊重⑥濃く際行動規範の尊重⑦人権の尊重が社会的責任の7つの原則として提示されています。


2.15 製品(product)

「販売のために組織(2.12)から提供される、又は組織によるサービスの一部である物品若しくは物質。」

組織によって販売されたりサービスの一部として提供されたりする「モノ」のことを言います。製品を販売することが目的の営利組織では事業活動の中核となってきます。


2.16 サービス(service)

「需要又はニーズを満たすための組織(2.12)の行動。」

「モノ」を販売するのではなく、組織によるなんらかの行動や情報などを提供する場合の対象物です。製品を販売するのではないのですが、そういった業務を中心に行っている会社では「サービス」が事業自活動ということができます。

テンカラ師のつぶやき(8)

平成21年9月11日
  本日晴天なり。
  明日は天気が崩れ雨になるようだ。

津久井の方は雨雲に近い鼠色の雲が出ている。
渓流釣り日和である、仕事を昼で切り上げ久し振りに神ノ川へ行くことに決め事務所を後にした。
時間はタップリあるので、滝下のピンポイントではなく数年振りに、砂利採取場の上から遡ることにした。

天候が回復してきてしまったが、もうここまで来てしまったので釣るしかない午後三時、釣り開始。
渓相としては申し分ないけれど、数年前のゲリラ豪雨にやられたせいで、昔の面影は薄れているが、ポイントは幾つも出来ている。
しかし、幾ら振り込んでも全く当たりがない、あの時の豪雨で岩魚が絶えてしまったのだろうか?
そんなことはない、ここのネイティブ岩魚は、僕が思う程柔ではないはず、きっとイメージした岩魚が合ってないだけだろう。

それにしても、全く動かない。
とうとう、いつもの滝下まで遡ってしまった。
それなら、ここで勝負をしようじゃないか。

白毛鉤を何種か替えてみたが当たりがない、濃茶に換え数回振り込んだところやっと「来た」。
主の大岩魚ではないが、二〇センチの腹が奇麗な黄色をした天然岩魚だ。
本腰を入れて勝負と思っていたところ、下流から餌釣り師とルアーマンが上がって来た。
それを見たら急にやる気が失せてしまったので納竿。

岩魚は、塩焼きにして酒の肴とし、美味しくいただきました。
この健気な岩魚に感謝。
今日はカメラを忘れてしまったので写真はありません。

この前 テンカラ師のつぶやき(7)を読む

それにふさわしい報酬を与えよ。しかし...

私が社会人となって最初の仕事は公務員でした。
公務員とはなんだろう。
そんなことをいろいろ考えていた中で、その当時よく思い浮かべたのは、ある小説に
書かれていた言葉でした。

その言葉は「海の都の物語」(塩野七生著)という作品にありました。
海の都であるヴェネツィアは、少なくとも7世紀から18世紀いっぱいに
かけて地中海貿易で繁栄した共和制の通商都市国家でした。

蛮族の侵入を避けるために海上の都市を建設したヴェネツィア人にとって
悩みの一つが、都市に張り巡らされた運河の管理でした。
運河は水上交通の基盤として通商国家の繁栄を支えてくれますが、
水流がよどみ、水が腐敗してしまうと、害虫や病原菌の発生源となって
都市を死滅させるおそれがあります。

このため、ヴェネツィア政府には運河を管理する行政官として、
「マストラート・アレ・アックワ(水の行政官)」
と呼ばれる役職がありました。
その職にある者は国家元首並みの待遇を受けたのだそうですが、
その就任の際に市民の前で投げかけられたのが次の言葉です。

「この者の功績を誉め讃えよ。それにふさわしい報酬を与えよ。しかし、
 この責任重い地位にふさわしくないとなったら、絞首刑に処せ。」

誰でも失敗はあります。しかし、その地位にふさわしい報酬を得た者には、
その地位にふさわしい責任を取らせなければなりません。その逆もしかり。
ヴェネツィア人にとって水の管理は、その責任者の命を奪わねばならない
ほどに重大な課題だったのです。

人口わずか15万人。資源を持たない都市国家が、フランク、トルコ、
スペインなどの強国としのぎを削って激動の1000年を耐え抜きました。
歴史上もっとも長く存続した共和国なのです。
私たちにはヴェネツィア人ほどの賢明さがあるのでしょうか。

(Kojiro Hino)