2011年5月9日月曜日

生肉食中毒事件で考えるリスク管理:あなたは命を「賭けて」信じていますか

GW中ずっとニュースの上位を独占していた生肉食中毒事件。

「安いものにはわけがある。」
一方で、「わけも無く高いものがある。」のも現実。
これは消費者にとって普遍的なテーマです。
高ければ安心ということではないが、安すぎるものには安心できない。
リスク管理は企業だけのことでなく、個々人にとっても重要なことです。

これまでのニュースでは焼肉チェーン店の食肉管理のずさんさが主なテーマになっていましたが、ここに来て、卸業者の責任が取り上げられました。
「生食でも大丈夫」だと言って販売していたらしいとの話です。

卸業者が「大丈夫」と言った。だまされた。だから焼肉店の責任は軽い。
こういう論理でお客様は納得するはずもありません。
焼肉店を信じた客は、実は「命がけ」で信じていたのに裏切られたということです。
客が命をかけて信じているのだから、焼肉店も命をかけて仕入れ先を信じなければなりません。

「信じる」という作業は「疑う」ということと表裏一体です。
「絶対に正しい」ことなら、疑う人はいませんから、信じる必要もありません。
たとえば、「太陽は東から昇る」ということを疑う人はいませんから、「私は太陽が東から昇ると信じている」とは考えません。

つまり、疑わしいからこそ信じる必要があるのであり、信じるということは「賭ける」ということでもあります。
よって、焼肉チェーンとしては、自社とお客様の命を賭けて仕入れるのだから、そのリスクに相当する注意を払って仕入れるべきでした。
もし注意を怠ったのならば、自社と客の命を軽く見ているということです。
そのことは事件発生の前後で変わることではなく、経営者がどう言い張っても、経営姿勢というものは事実として変えようが無いことです。
リスク管理の基本として、「信じることは賭けなのだ。」という認識は重要です。
賭けに負けたら代償を払うしかありません。

同じことは、今年1月に起きた都内某遊園地のジェットコースターでの死亡事故でもいえることです。
マニュアルどおりに作業しなかった従業員が悪いのだから、遊園地の責任は軽い。
ということにはなりません。当たり前ですね。

私達消費者は、ほとんど自覚が無いにしても、命を賭けて焼肉店や遊園地を信じているということです。
こういう「賭け」を日々意識して行うことがリスク管理なのです。
決して、危険を回避することばかりがリスク管理ではなく、覚悟して「賭ける」ことが含まれています。

今回の報道のおかげで、私自身のリスク管理も甘かったことに気がつきました。
やっぱり生肉はあぶないのですね。
生肉は命にかかわるリスクポイントだった、という点が意外でした。
だから、今後焼肉店でユッケを食べる際には「命を賭けて」店を「信じる」ことにします。

KH